大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和61年(行コ)92号 判決

神奈川県鎌倉市雪ノ下一丁目一六番三四号

控訴人

川崎一

右訴訟代理人弁護士

苅部省二

日浅伸廣

東京都中央区日本橋堀留町二丁目六番九号

被控訴人

日本橋税務署長

原和雄

右指定代理人

田中澄夫

山内敦夫

佐藤敏行

主文

本件控訴を棄却する

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人は「原判決を取り消す。被控訴人が昭和五六年六月三〇日付でした控訴人の昭和五三年分所得税の更正のうち総所得金額六四九万八九一〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定並びに控訴人の昭和五四年分所得税の更正のうち総所得金額六二一万二三五四円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。被控訴人が昭和五六年一一月二八日付でした控訴人の昭和五五年分所得税の更正のうち総所得金額一〇五一万二九四六円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。被控訴人が昭和五九年一月三一日付でした控訴人の昭和刃五七年分所得税の更正のうち総所得金額一五四五万五二二〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

二  当事者双方の主張は、原判決三枚目表七行目から同八行目にかけての、及び同裏九行目並びに同四枚目表六行目及び同九行目から一〇行目にかけての「過少申告税賦課決定」をいずれも「過少申告加算税賦課決定」と改め、同二一枚目裏一〇行目の「否認することは、」の次に「控訴人において、放棄した賃料債権については民事上請求権を喪失してその弁済を受けられず、所得税のみ負担するという不利益を受けることになり、」を加えるほかは、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

三  証拠関係は、原審記録中の書証目録及び証人等目録並びに当審記録中の書証目録に記載のとおりであるからこれを引用する。

理由

一  当裁判所は、控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり附加、削除するほかは、原判決理由説示のとおりであるからこれを引用する。

1  原判決三〇枚目裏一〇行目の末尾に「なお、右各条項の文言上、債権の回収の見込みがないことが確実となつた場合即ち回収不能の場合とは規定していないからといつて、回収不能となるおそれが生じた場合を含むとの解釈をひき出すのは、まさに文言上無理であることは明らかであり、また、書面による債権放棄を要件としたところで、それは貸倒れ等の事実、換言すれば、当該債権が客観的に実質上無価値になつたとの事実を必ずしも微表するものではないから、未だ課税要件をあいまいにするとのそしりを免れないことも明白といわなければならない。」を加える。

2  同三一枚目表八行目の「第一七号証」の次に、「第二二号証の二」を加える。

3  同三二枚目表八行目の「あること、」の次に「昭和五七年三月期(第一〇期)及び同五八年三月期(第一一期)には、損益計算書上減価償却費を計上しても営業損益は黒字となるに至つたこと、」を加える。

4  同三二枚目裏六行目の「ない」の次に「これに反し、実態は破産同然であつて、代表取締役の控訴人が債権者であり担保権者である銀行から辛うじて支払猶予を得て、破産を免れていたにすぎないといつた事実は、これを認めるに足りる証拠はない。)」を加え、同九行目の「衰微もなく」の次に「(右がたまたま当初の見込みに反し、結果としてそうなつたものにすぎないとの証拠もない。)」を加える。

5  同三三枚目表四行目の「よるものであるが、」の次に「このことは、川崎地所の前記事業目的及び川崎ビル建築資金の借入状況に鑑みて、事業開始後暫くの間についていえば敢て異とするに足りないことと言うべく、のみならず」を加え、同六行目の「傾向にあり、」の次に「営業損益も黒字となるに至つており、」を加え、同九行目の「解される」の次に「(第一回控訴人尋問の結果中右の趣旨に反する部分は採用しない。)」を加える。

6  同三五枚目裏五行目の「本件においては、」の次に、「本件全証拠に微しても、中里は控訴人による所与の事業関係のもとでの税法解釈ないし指導をした域を出ないものと認められ、未だ前示の納税者が信頼をいだくことにもつともな事情があつたというを得ず、」を加え、同九行目の「それを超える」から同一〇行目の「ないから、」までを削る。

7  同三六枚目表一行目の「認め難い。」の次に「この点控訴人は、控訴人において、放棄した賃料債権について仮に貸倒れが認められないとすれば、民事上その請求権を喪失して弁済を受けられず、所得税のみ負担するという不利益を受けることになる旨主張するが、右主張は、右の賃料債権が回収不能すなわち無価値化に基づく貸倒れ等に当たるとの前提に立ちものであるが、そうとすれば、右債権を喪失するということ自体無意味であるのみならず、上来説示したとおり、その前提が認められないのであるから、所詮採用の限りではない。」を加える。

8  同三七枚目表八行目の末尾に「それ以上に、そのような運用をしていないことを被控訴人に立証することを求める筋合いはない。」を加える。

二  よつて、控訴人の本訴請求は理由がないから、これを棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がなく棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高野耕一 裁判官 川波利明 裁判官 米里秀也)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例